植物病原性卵菌であるホウレンソウ根腐れ病菌Aphanomyces cochlioidesやダイズ茎疫病菌Phytophthora sojaeの遊走子は、それぞれの宿主植物から分泌される植物二次代謝産物の一種であるフラボノイドに対し強い走化性を示す。これまでに、A.cochlioidesの宿主認識物質としてcochliophilin A(CA)を単離し遊走子細胞膜上に存在するCA受容体タンパク質の粗精製を行った。今回、異なる界面活性剤を使用した膜タンパク質溶解バッファーを使用することにより、全膜タンパク質画分と複数回膜を貫通するタンパク質画分の分別精製を行い、CA受容体タンパク質は少なくとも2回以上細胞膜を貫通するタンパク質であることが確認された。また、複数回膜貫通型タンパク質だけを抽出することにより、得られるCA受容体タンパク質の精製度及び収率の向上に成功した。二次元電気泳動により分離・精製したCA受容体タンパク質のN末端アミノ酸配列解析及びMALDI-TOF/MSによる質量分析の結果、ABCトランスポーターや二成分情報伝達系タンパク質と相同性が高いことが分かった。 本研究の遂行により、高純度のCA受容体タンパク質を精製する事に成功しN末端アミノ酸配列の情報が得られたことから、CA受容体をコードする遺伝子に対するディジェネレートプライマーを設計することが可能となった。今後CA受容体タンパク質について、タンパク質を直接解析する生化学的手法と遺伝子から解析する分子生物学的手法の両面からのアプローチが可能となった。
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