研究課題
ファイトプラズマは、植物の篩部細胞内に寄生して、黄化・萎縮症状などを引き起こす病原細菌である。これまで、Candidatus Phytoplasma asteris OY strain弱毒株(OY-M)のゲノムには、ペントースリン酸経路やF_0F_1-ATP合成酵素などに関する遺伝子が認められず、ファイトプラズマが究極的に退行的進化を遂げた微生物であることが明らかとなっているが、病気を引き起こす分子メカニズムは未だ不明である。特にF_0F_1-ATP合成酵素を持たないことから、ファイトプラズマはATP合成を解糖系に大きく依存していると考えられており、糖の消費と病原性との関連性が推測されていた。そこで今年度は解糖系遺伝子をコードするゲノム領域に焦点を当てて比較ゲノム解析を行った。ゲノムが解読されたOY-Mのゲノムサイズは約860kbpであるのに対し、病原性の強い強毒株(OY-W)では約1Mbpであり、両株の病原性の違いとゲノム構造との関連が推定されてきた。解糖系遺伝子である6-phosphofructokinase(pfk)をプローブとして用いてサザンブロット解析を行ったところ、OY-Mではそれぞれ1本のバンドしか検出されなかったのに対し、OY-Wでは2本のバンドが検出され、両株におけるpfk遺伝子のコピー数の差異が示唆された。周辺のゲノム配列を決定したところ、OY-Mでは5つの解糖系遺伝子が約30kbpの領域にコードされていたのに対し、OY-Wではこの領域がタンデムに2コピー重複していた。解糖系遺伝子群の重複は、他のバクテリアゲノムには認められない特徴であり、植物宿主より取り込んだ糖を積極的に利用することがファイトプラズマ強毒株の激しい病原性と関連している可能性が考えられる。
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