研究概要 |
シロイヌナズナの病害および環境ストレス応答遺伝子1,200個を搭載したシロイヌナズナ1.2Kマイクロアレイにより、アブラナ科野菜類炭疽病菌の攻撃に対するシロイヌナズナの応答遺伝子の解析を行った。その結果、感受性のエコタイプCo1-0と抵抗性伊古田イプWs、Ei1-0の遺伝子発現プロファイルには明らかな差が認められ、マイクロアレイによる解析により、病原菌に対する病害感受度の判定ができることが示唆された。そこで、シロイヌナズナにおける病害応答診断の方法論の構築を検討し、(1)基本となるサリチル酸(SA)、エタフォン(ET)、メチルジャスモン酸(JA)処理のデータベースの構築、(2)SA、ET、JAシグナル伝達経路上のマーカー遺伝子の発現プロファイル、(3)実験系統樹解析、(4)発現遺伝子の相関解析を統合して解析することにより、病害感受度を判定できる可能性が示された。また、モデル植物で得られた知見を農作物に応用することを目的として、ハクサイのESTを用いて、ハクサイ2.0Kマイクロアレイを構築した。ハクサイマイクロアレイにより、SA、ET、JA処理で発現するハクサイ遺伝子を探索した。さらに、ハクサイ-シロイヌナズナ間のカンターパート遺伝子を同定し、両植物間の病害応答性を比較解析した。その結果、ハクサイの病害抵抗性マーカー遺伝子の候補がいくつか得られた。次いで、シロイヌナズナとハクサイに薬剤およびアブラナか野菜類炭疽病菌を接種し、薬剤応答性をマイクロアレイにより解析した。その結果、本病原菌に対するシロイヌナズナおよびハクサイの遺伝子発現プロファイルに類似性が認められた。18年度の研究により、シロイヌナズナで得られた知見がハクサイにおいても利用できることが示唆された。次年度以降は、モデル植物を用いた遺伝子診断法の方法論を確立し、農作物への応用展開を試みる。
|