研究課題
近年の研究により、モデル線虫C.elegans以外の多くの線虫は、外環境からの2本鎖RNAの取り込み能力と体内でのRNAiシグナルの増幅能力が欠損しており、RNAi誘導が難しいことが明らかとなってきた。これは植物寄生線虫マツノザイセンチュウにおいてもあてはまり、RNAiの誘導には条件、手法を十分に検討する必要がある。マツノザイセンチュウにおけるRNAi誘導条件を検討するため、まず、ターゲットとする遺伝子を選択した。この選択には、(1)これまで植物寄生線虫、動物寄生線虫で、明らかな効果が見られた報告があるもの、(2)モデル線虫C.elegansにおいてその遺伝子の役割がクリアに判明しているものを基準とした。また、(1)遺伝子発現部位における影響を検討できるよう発現部位の異なるもの、(2)発現量による影響を検討できるよう発現量の異なるものを含めることにも留意した。以上の基準から、食道腺で特異的に発現している細胞壁分解酵素、性腺で発現しているMajor sperm protein、全身で発現しているハウスキーピング遺伝子等を含む12遺伝子をターゲットとして選択した。これらのターゲットに対してソーキング法を用いてRNAi誘導を試みた。しかしながら、ほとんどの遺伝子について発現量の明らかな減少、表規形の明確な変化を観察することはできなかった。2本鎖RNAの体内への取り込みは効率よく行われていることは蛍光標識を用いて確認済みであるので、取り込み後にRNAi誘導を阻害している案件があると思われた。これを検討するため、誘導に使用する2本鎖RNAの長さ、RNA濃度、ソーキングの期間を変更して解析を行う必要がある。また、問題点として、ソーキング法を行う場合、RNAi誘導期間が限られており、長期間の影響を解析するのは困難であることが判明した。この問題を解決するために新たな手法の開発に取り組む必要がある。
すべて 2007
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Mol Biochem Parasitol 155
ページ: 9-17