研究概要 |
本研究は、スズメバチの幼虫が吐糸して作る繭(ホーネットシルク)が、高い細胞非接着活性を示すメカニズムを解明することを目的としている。この目的を達成するために、平成18年度は以下に示す4課題について研究を行った。 1,ホーネットシルクを構成するタンパク質のアミノ酸配列(一次)、二次および三次構造の決定 2,ホーネットシルク中に含まれる、タンパク質以外の含有成分の徹底分析。 3,表面形状が異なるホーネットシルクフィルム間での細胞接着活性比較。 4,細胞非接着活性を活かしたホーネットシルク素材の加工法の開発。 上記の研究を行った結果、キイロスズメバチのシルクを構成する主要4タンパク質のアミノ酸配列を決定した。さらに、固体NMRを用いた二次構造解析の結果と、アミノ酸配列の結果を組み合わせることによって、ホーネットシルクの三次構造はCoiled-coil構造を形成している可能性が高いことが分かった。このことは,タンパク質のCoiled-coil構造形成確率の理論計算からも示唆された。 ホーネットシルクがCoiled-coil構造の形成能が高いことは、ホーネットシルクの水溶液が不安定であり、容易にゲル化することにも反映されている。このホーネットシルクの高いゲル形成能を利用した新規フィルム化法(ゲルフィルム化法)を開発した。ゲルフィルム化法で作製したフィルムと、キャスト法で作製したフィルムで細胞非接着活性を比較したところ、キャスト法で作製したフィルムの方が、細胞非接着活性が高いという結果になり、フィルムの表面形状が細胞接着活性に影響を与えることが分かった。 ホーネットシルク中には、タンパク質以外にワックス成分が多く存在していることが分かった。このワックスの構造をGC-MS、固体NMR、DSCを併用して詳細に解析した結果、幼虫の体表ワックスが付着したものであり、非常に結晶性が高い炭化水素を主体とする成分であることが分かった。
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