研究課題
土壌環境中の重金属に応答した植物の活性酸素生成とカルシウム情報伝達への影響を解明するため、シロイヌナズナ、タバコ、トマト、イネなど様々な植物材料を用いて研究を行ってきたが、特にタバコ培養細胞を利用した研究において進展があったので以下に記載する。重金属に対する植物細胞の応答過程で細胞内でのカルシウム情報伝達力種要な役割を果たすことに着目し、銅処理を行ったタバコ培養細胞における細胞内カルシウム濃度変化 (細胞質のみで発現させたエクオリン発光によりリアルタイムに観測) と細胞死 (エバンスブルー染色により定量化) の誘導の間に相関があること実験により示した。次に、分子レベルでの植物細胞保護の観点から、生体毒性を示す金属を取り込み無毒化することにより植物細胞を保護する活性を有するペプチド配列を設計し合成した (将来は遺伝子組み換えによる導入を検討) 。本オリゴペプチドはヒトプリオンタンパク質の銅結合領域のアミノ酸配列を参考にしたものである。銅により誘導される細胞へのカルシウムイオンの取り込みを阻害するため、新規に開発したペプチド性の植物細胞保護試薬を植物に添加し、効果を検証した。実際に、ペプチド添加により銅イオンにより誘導される細胞内カルシウム濃度上昇の阻害に成功した。細胞死誘導過程において重要な役割を担うカルシウム情報伝達経路が阻害されたことで細胞死の抑制が予想された。予想の通り、ペプチドを添加した処理区では、銅による細胞死が有意に阻害された。これらの知見は、将来、重金属の毒性から植物を保護する目的で、土壌改良あるいは耐性植物の創出に向けた有用な知見であるといえる。この成果は、国内外の学会での発表後、論文としてZeitschrift fuer Naturforschung誌に受理されており、年内に出版予定。一方、アルミニウムによる細胞毒性に活性酸素とカルシウム情報伝達の下流で機能するサリチル酸情報伝達系が関与することがシロイヌナズナのさまざまな変異体を用いて明らかにした(複数の論文投稿を準備中)。
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Zeitschrift fiir Naturforschung 64c(印刷中)
Proceedings of 3rd Japan-Taiwan Joint International Symposium on Environmental Science and Technology 2008 3
ページ: 211-213
Proceedings of 3rd Japan-Taiwan Joint International Svmnosium on Environmental Science and Technology 2008 3
ページ: 208-210