研究概要 |
腐植物質は土壌に普遍的に存在する最も主要な有機態炭素であり,近年の地球温暖化等の問題から炭素リザーバーとしての役割が重要視されている。腐植物質の生分解機構はその集積機構とならび,炭素蓄積機能を支配する最大の因子であるが,その詳細は不明である。そこで,本研究では腐植生分解機構の理解を図るために,固定化した酵素を用いて酵素反応による腐植物質分解機構を解析することを目的とした。本年度は,固定化をおこなう腐植分解酵素の選抜を行った。まず,10種類の市販酵素について酵素濃度や反応pHを変化させて反応させた際の褐色森林土腐植酸の吸光度変化を検討したところ,ラッカーゼでは槌色反応が,カルボキシルエステラーゼでは着色反応が認められた。ラッカーゼはリグニン分解酵素としても知られていることから,リグニンの分解と同様の反応が腐植分解反応に関与することが考えられた。また,カルボキシルエステラーゼとラッカーゼを用いた逐次反応では,ラッカーゼ単体の反応に比べて槌色率は高くなることが示された。これは,カルボキシルエステラーゼによってエステル結合が加水分解されて生成したカルボキシル基やヒドロキシル基がラッカーゼによって分解された事から生じたと考えられる。また,これら2種類の酵素を褐色森林土フルボ酸と反応させたところ,腐植酸と同様の反応性が認められたが,ラッカーゼではフルボ酸,カルボキシルエステラーゼでは腐植酸の方が反応性はより高い傾向が認められた。以上のことから,これら2種類の酵素は腐植酸とフルボ酸ともに分解反応をおこなうことが考えられたことから,固定化法の検討に適用することとし,現在その検討をおこなっている。
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