本研究の目的は「森林小流域からの亜酸化窒素(N_2O)の年間放出量を推定」である。平成19年度は「土壌表面からのN_2O放出量の空間分布を把握する」ために、前年度と同じ茨城県城里町桂試験地で、下記の研究をおこなった。 1. N_2Oフラックスの空間分布の把握 斜面上部落葉広葉樹二次林および斜面下部スギ林で計51地点から表層土壌(0-5cm)を採取して、N_2O生成速度を実験室において30℃24時間で測定した。N_2O生成速度は、斜面下部スギ林土壌(4.1μg m^<-2>hr^<-1>)の方が、斜面上部広葉樹林土壌(0.6μg m^<-2>hr^<-1>)よりも大きかった。斜面下部スギ林土壌の方が、斜面上部広葉樹林土壌に比べて高pH、低C/N、大きな硝化速度といった環境にあったことから、N_2Oが生成しやすい環境であることが示唆された。 2. N_2O生成経路の解明 N_2O生成プロセスについて、硝化と脱窒のどちらが卓越しているかを明らかにするために、上記実験試料を用いて、アセチレン阻害法による培養実験をおこなった。脱窒由来N_2O生成速度については、斜面下部スギ林(2.3μg m^<-2>hr^<-1>)の方が斜面上部広葉樹林(0.3μg m^<-2>hr^<-1>)よりも大きかった。したがって、斜面下部スギ林土壌における大きなN_2O放出速度は、硝化過程からのN_2O放出のみならず、硝化で生じた硝酸が脱窒を受け、その際にN_2Oが放出するため、斜面上部広葉樹林よりもN_2O生成速度が大きいことが示唆された。
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