研究概要 |
Nocardioides sp. DF412におけるDfdRによるジベンゾフラン分解遺伝子群転写制御機構を明らかにするため、dfdB、dfda、及びdfdRプロモーター活性を測定するための系を構築した。宿主として、Rhodococcus. erythropolis IAM1399を、レポーターとしてはルシフェラーゼ遺伝子を用い、上流に各プロモーター領域を連結したプラスミドを構築した。さらに、レポータープラスミドと和合性を示すベクタープラスミドに、カナマイシン耐性遺伝子のプロモーター下流にdfdR遺伝子を置いた遺伝子断片を挿入し、2種類のプラスミドを共存させた。その結果、dfdR遺伝子存在下ではdfdBプロモーター活性は約1/100に抑制された。dfdRプロモーターの活性はdfdBプロモーターより低く、その活性はdfdR存在下で約1/4に抑制された。dfdAプロモーター活性は、dfdRの存在によって影響を受けなかったため、dfdAの転写制御因子は、他に存在することが強く示唆された。DfdRの基質を明らかにするため、上記のdfdBプロモーターを保持するレポータープラスミドと、dfdRを共存させた株に、ジベンゾフラン及びその代謝産物を加えたところ、代謝産物の一つである2,2',3trihydroxybiphenyl存在下で転写の抑制が弱まった。このことから、DfdRはジベンゾフラン非存在下ではdfdBCの転写を抑制しており、ジベンゾフランがDfdAによって分解されて生成する2,2',3trihydroxybiphenylを認識してプロモーター領域から離れることで、その後の分解をおこなうdfdBCの転写が活性化する、という機構が強く示唆された。プライマー伸長法によってdfdBの転写開始点は開始コドン上流35塩基に存在することが明らかになり、これはプロモーターの欠失解析(上流88塩基まで欠失してもDfdRによる抑制が観察された)と矛盾しない結果であった。また、DfdRを高発現させたR. erythriopolisの細胞抽出液とdfdBプロモーター領域200bpを用いたゲルシフト解析をおこなった。その結果、DfdRを発現させなかった細胞抽出液ではバンドのシフトが見られなかったのに対して、DfdRを含む細胞抽出液を用いた場合、シフトが確認された。このことからも、DfdRがdfdBプロモーターに結合するタンパク質であることが示された。
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