本研究では、「アセチル基転位酵素によるアミン類から高付加価値のあるアセチルアミド類の生産」を最終目標とする。本年度は、芳香族アミン類からアセトアニリド類へ変換する4-フェニレンジアミン分解菌Bacillus cereus 10-L-2由来のアリルアミンN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)遺伝子のクローニング、遺伝子解析、大腸菌における発現を検討した。平成19年度は以下に示すような結果を得て、その研究成果を発表した。 1)NAT遺伝子の検索 B.cereus 10-L-2は二つのNATを生合成する。精製酵素を部分分解し、得られたペプチド断片から内部アミノ酸配列を決定した。決定したアミノ酸配列よりPCR用のプライマーを設計した。本菌のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行い、増幅断片を得た。同増幅断片の塩基配列は既報のNAT遺伝子の1塩基配列と高い類似性を示した。つづいて、本菌のゲノムDNA上にも2つの同酵素遺伝子が存在するかサザンハイブリダイゼーションにて検討し、本菌は1つの遺伝子を有すると結論した。 2)NAT遺伝子の解析 増幅した断片の塩基配列を基に設計したプライマーを用いてインバースPCR法にて同遺伝子をクローニングした。同遺伝子はBacillus属由来のNAT遺伝子とアミノ酸レベルで高い類似性を示した。 3)大腸菌によるNAT遺伝子の発現 同遺伝子を大腸菌にて発現させたところ、その細胞抽出液は4-フェニレンジアミンに対して高い活性を示した。発現酵素を用いて、アセチル供与体としてアセトアニリド類を使用した結果、4-ニトロアセトアニリド存在下で4-PDがアセチル化されることを見いだした。
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