本研究では、「アセチル基転位酵素によるアミン類から高付加価値のあるアセチルアミド類の生産」を最終目標とする。本年度は、芳香族アミン類からアセトアニリド類へ変換する4-フェニレンジアミン分解菌Bacillus cereus 10-L-2由来のアリルアミンN-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)遺伝子の遺伝子解析、大腸菌における発現を検討した。平成20年度は以下に示すような結果を得て、その研究成果を発表した。 1) NAT遺伝子の解析 10-L-2株のゲノムDNAからクローニングした同遺伝子はBacillus属由来のNAT遺伝子とアミノ酸レベルで高い類似性を示した。 2) 大腸菌によるNAT遺伝子の発現 同遺伝子を大腸菌にて発現させたところ、その細胞抽出液は4-フェニレンジアミンに対して高い活性を示した。発現酵素を用いて、アセチル供与体としてアセトアニリド類を使用した結果、4-ニトロアセトアニリド存在下で4-PDがアセチル化されることを見いだした。 3) 発現株由来NATの精製と特性解析 形質転換株によりNATを生合成させ、精製後、同NATの特性を親株由来同酵素と比較した。アニリンおよびその誘導体について基質特異性試験をした結果、親株由来同酵素とは変換率が異なっていた。また、温度やpH安定性についても両酵素は異なっていた。
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