当初計画と初年度の実施概要、および成果 (1)嫌気性菌で発見された酸素代謝系酵素の機能解明 筆者は、代表的な絶対嫌気性菌で、環境浄化やバイオマスエネルギー生産の主力菌であるクロストリジウム属細菌の酸素感受性機構の解明を目的として研究を行い、優れた酸素応答機構・活性酸素分解系の存在を報告しました。そこで初年度は、クロストリジウム属細菌で酸素誘導性タンパク質として新規に発見されたタンパク質群の機能解明を目的として、Rubrerythrin様タンパク質、NROR、Flavoprotein、Dsr、Thioredoxin reductaseなど、現在までに機能未知の計6種のタンパク質を大腸菌にて発現・精製を行いました。Rubrerythrin様タンパク質に関して機能解析を行った結果、活性酸素(H_2O_2)の分解に直接関与する新規タンパク質であることが判明し、Rubperoxinと命名、FEBS letter誌に投稿、受理されました。今後は他の精製タンパク質の機能解明を随時行う方針であります。 (2)嫌気性菌ビフィズス菌の酸素代謝機構の解明 ビフィズス菌は、ヒト腸内で有用な微生物作用を発現するプロバイオティクスとして活躍しますが、酸素下で生育が阻害される弱点があります。1年度目は、ビフィズス菌が酸素下では過酸水素を自ら生産することが生育阻害原因であることの証明、また大気酸素濃度(20%O_2)下の液体振とう培養でも良好に生育する好気性種2株の発見、を行い、Applied Environmental Microbiology誌に投稿、受理されました。20%酸素下で生育可能な2株は、代謝解析の結果、酸素存在下で生産される酢酸:乳酸量比が変化しません。このことからも、本2株は研究材料として優れた性質を有することが証明され、今後は酸素耐性株と感受性の比較解析を通して酸素感受性の原因酵素の特定を試みる方針であります。
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