(新規anammox菌KSU-1株のヘムタンパク質の精製と機能解析) anammox菌KSU-1株がdominantな汚泥からヒドラジン酸化活性を持つ未知ヘム酵素を単一タンパク質として精製した。この酵素はホモダイマーで、サブユニットの大きさ(62kDa)と構造(1サブユニットに8個のc型ヘムが結合)は既知のヒドロキシルアミン酸化還元酵素(HAO)と類似していたが、ヒドロキシルアミンを全く酸化せず、ヒドロキシルアミン存在下ではヒドラジン酸化も阻害されるなど、HAOとは酵素化学的性質が全く異なっていた。そのため、我々はこの酵素をhydrazine-oxidizing enzyme(HZO)と命名した。シトクロムcを電子受容体とした際のHZOのV_<max>とK_mはそれぞれ6.2±0.3μmol/min・mg、5.5±0.6μMであった。 KSU-1株のゲノム上にはHZOをコードする遺伝子が2つ存在しており(hzoA、 hzoB)、これら遺伝子は塩基レベルで99.6%と非常に高い同一性を示した。これら遺伝子に高い相同性を示す遺伝子が、KSU-1株とは属レベルで異なると予想されるanammox菌Candidatus Kuenenia stuttgartiensisのゲノム上にも2個存在していたが、酵素化学的検証はされていなかった。相同性検索でその他に高い相同性を示す遺伝子は検出出来なかったことから、このHZOは全く新規の酵素であると考えられた。hzoAとhzoBの発現を解析したところ、どちらも転写、翻訳されており、どちらの段階でもhzoBの発現産物がhzoAのそれの数倍存在した。この発現量の差異は両遺伝子のプロモーターが異なることが原因と考えられた。
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