(cytochrome cの精製と性状解析) anammox菌KSU-1株のcell free extractの約5%程度を占める程多量に存在しているcytochrome cを精製した。このタンパク質は、分子質量12kDaと14kDaのサブユニットから構成される25kDaのヘテロダイマーで、還元剤ジチオナイト(標準酸化還元電位-600mV)ではほとんど還元されないという特異な性質を持つ難還元性cytochromeであった。別種のanammox菌であるK. stuttgartiensisなのゲノム解析により、ヒドラジンを脱窒するHZOから電子を受け取るcytochromeの酸化還元電位が-650mV以下であることが予想されている。そのため、我々が精製したcytochromecはその発現量と酸化還元電位の両特性から見てHZO(cell free extractの約10%程度を占める)と相互作用する可能性が高いと推察され、anammoxで生じた電子を膜に伝達する役割を担っていると考えられた。また、このcytochrome cのサブユニットをコードする遺伝子も同定し、それらが隣接しており、ポリシストロニックに転写されていることを確認した。 (HZOの結晶構造解析) KSU-1株優占汚泥から精製したHZOを用いてX線結晶構造解析用の結晶調製を試みた。Emerald Biosystems社のWizard IIIキットを用いて結晶化条件検討を行ったところ、いくつかの条件で結晶は得られたが構造解析可能な品質ではなかった。そのため、HZOの精製条件と結晶化条件検索キットを再検討する必要があると考えられた。
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