研究代表者は超好熱菌物Pyrobaculum islandicum由来グルタミン酸脱水素酵素がリコンビナントタンパク質として大腸菌を宿主に用いて生産されると不活性な形(不活性型酵素)で生産され、熱または尿素処理で天然由来の同酵素と同等の活性を有するまで活性化されることを見出している。さらに、活性化に伴って不活性型酵素の分子サイズが小さくなることをX線溶液散乱測定(SXS)より見出している。そこで、活性化過程での中間体の存在の有無及び、各過程での構造を求めることを目的に、活性化に伴う構造の経時変化を測定し、特異値分解(SVD))法を用いることによって反応の段階の数の解析を行った。それらの結果から、熱及び尿素処理での活性化ともに中間状態は存在せず2状態転移であることが明らかとなった。 また、既に代表者はアニリノナフタレン-8-スルホン酸を用いた蛍光測定より、不活性型酵素は疎水性残基が表面に露出していることを明らかとしている。そこで、プロテアーゼを用いた限定分解を不活性型・活性型で行い、不活性型で活性型とは異なり表面に露出している残基の探索を行った。分解された酵素をSDS-PAGEによって分離し、N末端アミノ酸配列を解析したところ不活性型酵素では172位のPheの後ろで切断されやすくなっていた。このことは、この残基付近が表面に露出していることを意味している。同酵素は4次構造形成に関与するドメイン1と補酵素結合に関与するドメイン2からなっており、172位付近はドメイン1に位置している。このことは、4次構造形成が活性化に大きく関与していることを示唆していた。
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