研究概要 |
研究代表者は超好熱菌Pyrobaculum islandicum由来グルタミン酸脱水素酵素(GDH)がリコンビナントタンパク質として大腸菌を宿主に用いて生産されると不活性な形(不活性型酵素)で生産され、熱または常温での5M尿素溶液中で天然由来の同酵素と同等の活性を有するまで活性化されること、酵素活性を有するには正しい4次構造形成が必要であることを見出している。 昨年度の成果より、不活性型酵素は疎水性残基が表面に露出し、プロテアーゼ消化によるアミノ酸配列解析は172位のPhe付近が表面に露出していることを明らかとした。本年度は、上記の結果を踏まえ、GDHが大腸菌体内で不活性型として生産される原因を解明するため、シャペロンに着目し研究を行った。シャペロンには好熱菌肪Thermococcus sp. KS-1由来FKBPの2種で、プロリン異性化酵素活性を持つものと持たないものを用いた。精製後のGDHに、それらシャペロンを加えても酵素活性に変化は見られなかった。そこで、それらシャペロンを大腸菌体内でGDHと共発現させた結果、プロリン異性化酵素活性を有するものでは大腸菌体内での生産にもかかわらず、酵素活性の上昇が見られた。このことからプロリンの異性化が活性に影響を与えていると考え、172位近傍のプロリンをアラニンに置換し、それらの大腸菌体内で生産させた際の酵素活性を測定した。その結果、142,144位のプロリンをアラニンに置換した変異体は酵素活性が上昇した。これらのことよりGDHの大腸菌体内での不活性型としての生産は、プロリン残基の異性化が正しく起こらず、その結果、誤ったフォールディングを導くことが原因と考えられた。
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