研究概要 |
デンプン粒の酵素的加水分解反応は、従来デンプン懸濁液中での反応の追跡が困難であったため、詳細な速度論的研究は行なわれてこなかった。これまでの研究において筆者らは、グルコアミラーゼによるトウモロコシ由来デンプン粒の加水分解反応を、電気化学バイオセンサーを用いることにより追跡し、反応初速度の解析を行なった。その結果、加水分解反応速度は、i)酵素の基質表面への吸着、ii)酵素基質複合体の生成、iii)生成物の放出の三段階機構を仮定して導かれた速度式により説明できることが明らかとなった。今年度は、基質を微結晶セルロース、加水分解酵素を真菌由来セロビオヒドロラーゼとした系についても検討を行なった。ピロロキノリンキノン依存型グルコースデヒドロゲナーゼを固定化したセンサーを作製し、それにより微結晶セルロース懸濁液中のセロビオース濃度に比例した電流値を連続的に測定した。微結晶セルロース懸濁液中にセロビオヒドロラーゼを添加した後の電流上昇の傾きより、定常状態における加水分解反応速度が得られた。その反応速度は、先のデンプン粒の酵素的加水分解反応と同様の三段階機構を仮定して導かれた速度式により説明できた。可溶性基質を用いた場合との速度パラメータの比較等についても検討し、それらの研究結果を学術誌(Analytical Biochemistry, 357, 257-261(2006))において発表した。また以上の成果は、国際学会(2回)、国内学会(1回)においても発表した。
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