1 研究代表者は、イネにおいて活性酸素の防御に関わる複数の遺伝子を制御する新規シス-エレメントCOREを発見している。本研究ではCOREに結合する転写因子をクローニングし過剰発現させることにより、植物の環境ストレス耐性の上昇を試みる。 平成18年度には上記転写因子のクローニングを目指して、yeast one-hybrid法によるcDNAライブラリーのスクリーニングを試みた。スクリーニングを行うための準備として、CORE配列を最小プロモーターの上流に連結したレポーター遺伝子を構築して酵母に導入した。しかしながらこのレポーター遺伝子導入株では、バックグランドのレポーター遺伝子の発現レベルが高く、偽陽性が生じることが判明した。そのためスクリーニングを実施するには至らなかった。 2 また本研究では、活性酸素消去酵素であるミトコンドリア型SOD遺伝子を過剰発現させた形質転換タバコにおける発芽・生育促進について解析を行うことを目的としている。この形質転換体が、環境ストレスに対する耐性を示すかどうかを検討するために、低温、高温、強光のそれぞれのストレスに対する耐性を調査した。その結果、低温、高温、強光に対する耐性が野生型に比べ上昇していることが明らかとなった。またミトコンドリア型Mn-SODの過剰発現による効果を、タバコ以外の他の植物種でも検討するために、イネにミトコンドリア型SOD遺伝子を導入し形質転換体の作出を行った。イネにおいて高発現するよう改変した恒常的プロモーターを用いて導入コンストラクトを構築し、形質転換を行った。得られた形質転換当代の個体において、遺伝子導入およびSOD活性の上昇を確認した。
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