研究課題
本研究では牛海綿状脳症(BSE)プリオンのin vitro細胞感染モデル系作出のための候補となりうるウシ脳由来の細胞株の樹立を目的とする。本年度は、7〜8ケ月齢のウシ胎子脳組織を材料として初代培養を行い、SV40-large T (SV40LT)遺伝子を導入して細胞の不死化を試みた。培養方法はDMEM/Ham's F-12(1:1)培地にトランスフェリン、インスリン、プロジェステロン、プトレシン、亜セレン酸ナトリウムを補充したものを基本培地とし、これに10%ウシ胎子血清(FBS)を加え基本増殖培地とした。さらに増殖因子としてヒト上皮細胞増殖因子(EGF)及びヒト塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加し増殖培地として用いた。SV40LT遺伝子導入後、抗生物質(G418)耐性細胞を選抜し、さらに限界希釈法により集団倍加数100回以上の紡錘状の形態を呈した単一の新規細胞株を樹立した。この細胞の増殖性は、増殖培地からEGF・bFGFを除くことで有意に減少した。また神経細胞分化誘導剤として知られるジブチリルcAMPやフォルスコリンで処理すると増殖抑制に加えて神経突起様の形態を誘導し、神経細胞マーカー蛋白質であるtubulin βIIIの発現量も増加することから神経前駆細胞の性質を持つ細胞株であることが示唆された。またこの細胞では、正常型ウシプリオン蛋白質の発現も確認されたことから、BSEプリオンのin vitro細胞感染モデル系への利用も期待される。これまでに汎用性のあるウシ由来の神経系細胞株はまだ存在しないので、ウシの神経系疾患やウシ脳機能研究のための新しいin vitroモデルとしてもその有用性は高いと考えられる。
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FEBS Lett. 581
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