研究課題
本研究では牛海綿状脳症(BSE)プリオンのin vitro細胞感染モデル系作出のための候補となりうるウシ脳由来の細胞株の樹立を目的とする。昨年度までに、ジブチリルcAMPで処理することで神経様細胞に分化し、正常型ウシプリオン蛋白を一定量発現している細胞株(FBBC-1)を樹立した。本年度はこのFBBC-1細胞を用いてBSEプリオンのin vitro感染実験を行った。細胞を35mmシヤーレに播種し、イギリスより輸入された野外発生BSE感染牛脳ホモジネートに暴露した。過剰な脳ホモジネートを洗浄後5回の継代の後、各継代数においてプロテアーゼK抵抗性の異常型ウシプリオン蛋白をウエスタンブロット法により検出した。その結果、2継代目までは異常型ウシプリオン蛋白が検出されエンドサイトーシス等で異常型が細胞内に取り込まれていることが示唆されたが、2継代目では異常型は完全に消失してしまい持続的な感染は確認できなかった。問題点として野外発生BSE感染牛脳ホモジネートでは感染因子の劣化・減少が考えられるため、実験的にBSEを感染させた牛の比較的新鮮な脳ホモジネートでも検討したが、残念ながら現在までのところ持続的なin vitro感染系の確立には至っていない。またin vitro感染系の成立には細胞での正常型プリオン蛋白の高発現が重要であることも知られている。そこで、FBBC-1細胞の内因性の正常型ウシプリオン蛋白の発現量では不十分であった可能性も考えられるため、ウシプリオン蛋白遺伝子をほ乳動物細胞発現ベクターであるpCEP4に組み込んだプラスミドを作製し、この細胞株への遺伝子導入について検討した。その結果リポフェクタミン法によりFBBC-1細胞には遺伝子導入が可能であることがわかった。今後は選択薬剤を用いて安定的に正常型ウシプリオン蛋白を高発現するFBBC-1細胞株を樹立しin vitro感染実験を検討したいと考えている。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
J. Immunol. 182
ページ: 2051-2062
Cell Biol. Int. 33
ページ: 187-191
J. Immunol. 180
ページ: 7827-7839