平成18年度は、カイコ(Bombyx mori)幼虫体内の摂食周期あるいは摂食行動により、体内で濃度の変動する2種類のペプチドを精製しその構造を明らかにした。1つは摂食行動を亢進するペプチド性の分子HemaP(Hemolymph major peptide)の構造を明らかにした。HemaPをコードするcDNAをクローニングし、このペプチドが脂肪細胞で主に発現していることを明らかにした。もう1つは、脂質成分を過剰に添加した餌を食べさせたときに、カイコ幼虫体液中の濃度が上昇するペプチドp4442を見出した。p4442をコードするcDNAをクローニングした結果、脂肪細胞で発現していることが明らかになった。これら2種類のペプチドは共に他の種では見られない新規な分子であることが明らかとなった。 HemaPに関しては、昆虫種で保存されている分子であるかを明らかにするため、鱗翅目昆虫であるエビガラスズメ(Agrius convolvuli)とモンシロチョウ(Pieris rape)からもHemaP相同分子を幼虫体液から精製しそのアミノ酸配列を明らかにした。お互いに約30%の相同性を有していた。 p4442は、摂食刺激によりその転写レベルが上昇することが明らかになった。そこで、転写レベルでの研究を行なうため、まず、カイコゲノムDNAからプロモーター配列部分を同定しその塩基配列を明らかにした。また、レポーター解析により転写調節機構を明らかにしようと試みている。現在、動物細胞を用いた系で基本転写因子群の結合領域が同定できた。
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