平成18年度の成果では、カイコ(Bombyx mori)の幼虫体内における摂食行動調節をする候補因子として、2種の新規ペプチド性因子(p4442とHemaP)を同定したことを報告した。平成19年度では、両ペプチドの発現解析および幼虫体内での分子動態の解析を行った。 p4442の発現定量解析は、定量PCRを用いて確立した。それを用いて、カイコ幼虫の脂肪体内のp4442のmRNAの発現量を解析した結果、幼虫の脂肪体におけるp4442の転写量は、摂食することにより上昇することが明らかになった。また、ステロールを過剰添加した餌に応答し、脂肪体内のp4442の転写レベルが上昇したことから、p4442の転写量は餌中の脂質成分に応答して制御されていることが示唆された。 HemaPに関しての解析として、生体内の濃度変動を解析する目的で、LC-TOF-MSを用いた定量系を確立した。その定量系を用いてカイコ幼虫の終齢における脂肪体からの分泌量を定量した。その結果、HemaPの濃度は成長に伴う顕著な増減は認められなかった。しかし、絶食することにより、徐々にHemaPの濃度が上昇した。また、食餌を再開させることにより元のレベルまで減少することが分かった。さらに、分子動態を調べるため、放射性ヨード化標識HemaPを調製した。それを用いたところ、脂肪体から分泌されたHemaPは、食餌により脂肪体に取り込まれることが分かった。
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