本研究では、まずセンサーとして機能する薄膜電極を、ソフトリソグラフィー法を用いて作製した。作用極、対極はCr、Auを蒸着後、エッチング法で造形し、続いて擬似参照極をCr、Ag蒸着後、リフトオフ法で造形した。そこに、流路を作り込んだPDMSポリマーを接着し、電極が正常に機能するか確認した。その結果、メディエーターの還元電位(-750mV vs Ag/AgCl)では対極が剥離することが分かり、対極としてPt wireを流路に埋め込むことでこの問題を解決した。 次に、既知のプロトコールに従ってR.sphaeroidesからDMSO還元酵素を精製し、BSA-グルタルアルデヒドでAu電極上に固定し、バッチ型のバイオセンサーを作製した。このセンサーは溶存酸素による還元電流の影響を受けるため、脱酸素が重要である。そこで、グルコースオキシダーゼ-カタラーゼ系を用いたところ、再現性よく溶液中の脱酸素を行うことができた。さらに、測定条件を最適化した結果、このセンサーは、検出限界200μMで、その検量線は1mMまで直線性を示した。各濃度におけるシグナルの相対標準偏差は3.6%以下で、感度は23.8mA/M・cm^2であった。 また、この固定化法によるセンサーの耐久性については、6日以内では約半分の応答を維持していたが、8日後には応答が著しく低下した。DMSO還元酵素自体は15日後でも最初の80%の活性を維持することから、センサーの応答低下の主な原因は、薄膜電極表面からの酵素の脱離と考えられる。
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