ツユクサの青色色素コンメリニンは、アシル化アントシアニンのマロニルアオバニン、配糖化フラボン、マグネシウムイオンからなる分子量が9kDaでナノサイズにも及ぶ巨大自己組織化超分子金属錯体色素である。構成成分のうち配糖化フラボンの合成は既に完了しているので、アシル化アントシアニンの合成方法を新たに創出してマロニルアオバニンを合成し、コンメリニンの全合成を行う。アシル化アントシアニンの合成は全く報告がないので、まず、既知のアントシアニンの合成方法を応用して簡単なアシル化アントシアニンの合成を行った。配糖化フラボノールを金属還元によりアントシアニンへと変換する合成方法を、バーベナのアシル化アントシアニンに応用したところ、全合成を達成することができた(論文準備中)。次に、このアシル化アントシアニンの合成研究における問題点を検討し、さらに複雑なアシル化アントシアニンの合成に耐えうる合成手法の開発を行った。即ち、アントシアニンの生合成経路で予想されている中間体のロイコアントシアニジンからアントシアニンへの酵素反応による変換に着目して、フラベノール配糖体が空気酸化により効率的に変換できることを見出し、シアニジン3-グルコシドの全合成を達成した(Org.Lett.2006)。この報告は、酸化的手法による初めてのアントシアニンの合成例であり、アントシアニンの化学合成に新たな扉を開いた。このフラベノール配糖体からアントシアニンへの温和な空気酸化反応による合成戦略を機軸に、現在、シアニン及びアシル化アントシアニンのシソニンの合成を行っている。現在のところ、これらの重要鍵中間体である3位と5位にグルコシル化されたカテキン誘導体の合成に成功している。今後、酸化的手法によるアシル化アントシアニンの合成手法を確立し、コンメリニンの全合成に挑む。
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