植物は潜在的に病原体から身を守る免疫システムを有している。この免疫システムは病原体由来の物質(エリシター)を認識することにより誘導されるが、人為的にエリシター様活性物質を処理することによって、植物に病害抵抗性を付与することが可能である。本研究では、植物免疫システムを誘導する新規ペプチドの発見を目的として、ランダムペプチドライブラリのスクリーニングを行った。 これまでに開発した、植物の代表的な防御反応の一つである過酸化水素の発生を指標としたスクリーニング法を用いて、コンビケム手法により作製した固相ペプチドライブラリのスクリーニングを行なった。ペプチドライブラリの作製は、特別な装置を必要とせずに迅速にランダムライブラリを合成することが可能なスプリット&ミックス法により行った。スプリット&ミックス法では一つのビーズ上に1種類のペプチドが合成される。スクリーニングには、6残基の長さで、すべてランダムな配列を有する直鎖ペプチドライブラリを供した。植物材料として、防御反応についての研究例の多いタバコ懸濁細胞を用いた。組み合わせ上考えられる全配列の約2%を含むペプチド-ビーズをスクリーニングした結果、5個の活性ビーズが見出され、そのうち一つについて配列を決定することができた。 この配列からなるペプチドを再合成し、過酸化水素の発生を指標とする活性を測定したところ、有意な活性が観察されたことから、このペプチドが防御反応を引き起こす新規物質であることが示唆された。
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