大麻(Cannabis sativa)はカンナビノイドと称される特異な「次代謝産物を含有することが知られている。本年はカンナビノイド生合成酵素(THCA synthase及びCBDA synthase)の立体構造解明を目的に研究を行った。THCA synthaseについては、すでに結晶化に成功していたが、適切な重原子置換ができなかったため位相の決定に至っていなかった。そこでTHCA synthaseに相同性を持ち、最近立体構造の報告されたオキシダーゼの構造を鋳型に分子置換を行いその立体構造を明らかにした。活性部位の構造を複合体結晶として解明するため、活性中心プローブとして計画した還元型基質の有機合成を行った。しかしながら本化合物は合成こそ達成したものの疎水性が非常に高く、酵素との複合体形成には不向きであると判断した。そこで基質分子の立体構造を計算化学的にデザインし、ドッキングスタディを行うことにより、酵素活性部位の構造を明らかにした。得られた構造及び部位特異的変異の結果から、THCA synthaseが触媒するオキシダーゼ活性に必要な活性部位を決定することができた。一方CBDA synthaseに関しては十分量の酵素が得られなかったため、THCA synthaseの立体構造を基にした分子モデリングで推定構造を作製した。本モデルからTHCA synthaseとCBDA synthaseは活性部位に存在するわずかなアミノ酸置換により生成物を作りわけていることが示唆された。現在、部位特異的変異導入によりこれを機能面から検証している。
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