研究概要 |
腸内細菌叢を迅速かつPCR増幅によるバイアスなしに計数するためのFISH-フローサイトメトリ法を確立した。プレバイティクスとしてビフィズス菌増殖活性の知られているラフィノースのヒト腸内細菌叢への影響を本手法を用いて種レベルで観察した。その結果、B.adolescentis, B.catenulatum group, B.longumの順でヒト糞便内で優勢であり、ラフィノース摂取によりその優占順位を保ったまま菌数が増大し、摂取後は摂取前と同等の菌数まで減少することを示した。一方、B.breve, B.bifidum, B.angulatumの摂取前の菌数は前記の3菌種に比べて少なく、摂取14日目まで急増したが、28日目では逆に減少した。これらの結果から、ラフィノースによるビフィズス菌の増殖促進効果は菌種により異なることが明らかとなった。 ヒト腸内常在真菌であるCandida albicansがアトピー性皮膚炎を増悪することが報告されている。粉末精製飼料を摂取させたマウスにC.albicansを単回経口投与することにより、消化管にC.albicansを定着させるモデルをすでに確立している。このモデルを用い、C.albicansの消化管バリアへの影響を解析した。C.albicansの定着により、経口投与したアレルゲンの血中への移行が促進され、アレルゲンに対する免役応答が増大することを示した。アレルゲンの血中移行の増大の少なくとも一部には肥満細胞が関与することを明らかにした。以上より、消化管へのC.albicans定着は、肥満細胞の活性化を介して消化管バリアを傷害することで食物アレルギーを増悪する可能性が示唆された。
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