樹皮呼吸装置の測定チャンネル数を2から6に増やし、4つの異なる直径階の枝や幹について(直径0.5cm、3cm、6cm、20cm)樹皮呼吸と樹皮光合成の季節変化を調歳た。直径0.5cmの枝(当年枝)は切り枝の状態で環境を制御して測定した。その他の枝は着生状態で環境を制御せずに測定した。その結果、樹皮呼吸と光合成は開葉直後に高く、冬に最も低い値を示すこと、樹皮光合成速度は直径の増加にともなって低下すること、呼吸速度と光合成速度には密接な正の相関があること、6cm以下の枝では樹皮光合成速度は呼吸速度の20-80%に達することが明らかになった。樹皮光合成の炭素収支に占める割合は無視できない可能性がある。太い枝や幹での樹皮光合成については研究が少なく、貴重な成果が得られた。 野外での測定では、月中に温度が上昇しているにも関わらず、呼吸速度が大きく低下した。これは暗処理を施して樹皮光合成を抑制しても観察されたので、樹液流によるCO2の持ち去り効果であると考えられる。樹液によるCO2の持ち去りによって、呼吸速度が50%以上低下している可能性があり、炭素収支に大法な影響掛与えているかもしれない。 また、測定方法に関する課題も見つかった。野外で樹皮光合成を測定ずるために透明なチャンバーを使用すると、強い光が入射した際に樹体温度が急激に上昇することである。温度の過剰な上昇は、呼吸速度と光合成速度の過大評価を引き起こす再能性がある。来年度は熱線遮断フィルムを貼るなどの工夫が必要である。
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