研究概要 |
外来樹種アカギの種子散布距離を把握するために、小笠原諸島父島のコーヒー山試験地内にシードトラップを設置し、落下する種子数と開花結実個体の位置を調べた。試験地内に落下したアカギ種子について、試験地外からの遺伝子流動の割合を推定することを目的として、アカギのマイクロサテライト遺伝マーカーの開発と落下種子からのDNA抽出をすすめてきたが、マーカーのスクリーニングの段階で、どのマーカーも多数のピークが確認されスクリーニングが困難となった。2007年に発表された文献(XUE, et. al.,2007)から、アカギの染色体の基本数はX=7もしくはX=11-14,2n=196で高次に倍数化しており、基本数を14とするなら14倍体であることがわかった。そのため、高次倍数体である樹種については、遺伝解析による親子判定はほぼ不可能であるため、近距離の種子散布についてはトラップ内の種子数と最も近い親木との距離による推定法を用い、長距離については散布するヒヨドリなどの鳥の飛行距離と種子の体内貯留時間などから推定する手法を用いることにした。過去2年(2005年、2006年)にトラップ内に落下したアカギ種子数と、母樹からの距離との関係をみると、母樹から10m以内に位置するトラップ内に落下する種子数が多く、これ以上の距離では急激に種子数が減少した。今回1個以上の種子が確認されたトラップで母樹から最も遠い位置にあったものは、82mであった。ヒヨドリによる種子の排出は、過去の研究例(Fukui,2003)からアカギと同等のサイズの種子では約5分程度と考えられ、採食してから比較的早い時間に散布されるものと推定された。
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