研究課題
若手研究(B)
島嶼生態系における侵入種の拡散パターンを明らかにするために、小笠原諸島の侵入樹種アカギ(Bischofia javanica)を対象として、アカギの種子散布距離を推定した。また、地域的にアカギを根絶した際の非根絶区からの再加入リスクを定量化し、上木根絶後の森林管理手法を提案することを目的とした。アカギ実生の発生は、上木枯殺後2年経過するとかなり低くなることから、少なくとも2年間は下層で発生したアカギを駆除する必要がある。在来樹種の実生発生率は、アカギや他の外来種に比べて極端に少なく、その要因の1つとしてクマネズミによる種子食害が考えられた。アカギ上木枯殺区において、種子トラップ内に鳥散布によるアカギ種子の落下が確認された。アカギ種子の再加入率は、最も近い結実木から70m以内で高かったがそれ以上離れると低なり、最長散布距離は144mであった。したがって、今後根絶区への再加入リスクを考えた場合、非根絶区から70m以内はハイリスクであり、おおよそ150m程度離れるとリスクはかなり低いと思われる。アカギを除去するだけでは、在来種の発生や定着を促進する効果が低く、むしろそれまで被圧されていた他の外来種の成長を促進し、繁殖量を増殖させてしまうことが明らかとなった。在来種の森林を再生させるためには、アカギ駆除と同時に、他の外来樹種の駆除をおこなう必要がある。また在来種の種子を食害している外来動物のクマネズミの駆除をおこなうことも、在来種の実生発生量を増加させるためには有効であると思われる。
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