本研究は、日本各地のマツノザイセンチュウの遺伝的構造を明らかにすることにより、日本国内におけるマツノザイセンチュウの系統の現時点での分布状況とそれらの系統の生物学的特性を明らかにすることを目的としている。 本年度は、比較的近年に材線虫病が侵入した被害最先端地域である東北地方と、材線虫病被害の歴史の古い地域である近畿地方、中国・四国地方のマツ林からクロマツまたはアカマツの枯死木の材片を採集した。東北地方では、最初に材線虫病が発生した石巻市周辺、被害最先端地の岩手県中北部と秋田県北部を中心に採集を行った。また、近畿・中国・四国地方の材片採集には、各府県の林業試験研究機関の研究員の協力を得た。採集した材片からマツノザイセンチュウを分離し、アイソレイト(培養系統)を作製した。また、隔離された離島である鹿児島県種子島のヤクタネゴヨウ枯死木からもマツノザイセンチュウのアイソレイトを作製した。分離したマツノザイセンチュウの約200アイソレイトからDNAを抽出し、現在、AFLP法等のDNA解析を実施中である。
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