本研究の目的は、森林土壌中における二酸化炭素濃度(CO_2)の水平・鉛直分布とその時間変動特性を、CO_2濃度計の多数埋設によって明らかにすることである。2006年9月から2007年10月までの間、ブナ二次林(岩手県八幡平市安比高原)の土壌中に25台のCO_2濃度計を設置し、土中CO_2濃度の連続測定を行った。濃度計の埋設深度は0、5、10、20、40cmとし、林床の5地点で測定を行った。 森林土壌中のCO_2濃度は夏期と厳冬期に高くなり、融雪時期と積雪直前の時期に低くなっていた。夏期における濃度上昇は、地温の上昇に伴ったものであるが、冬期における濃度上昇は積雪の影響であった。積雪前、CO_2濃度は地温の低下とともに減少したが、積雪が始まるとCO_2濃度はすべての深さで増加に転じた。林内積雪深の変化と比較すると、浅層のCO_2濃度上昇は積雪深の増加に比例していることが確認できた。融雪期に入ると、土壌中CO_2濃度の急激な減少がみられた。 土壌中の平均CO_2濃度は深さとともに増加するが、その鉛直勾配は夏場に大きく、積雪下で小さくなる傾向があった。年間の平均鉛直濃度勾配は5〜10cm深の層で最も大きくなった。一方、年間の平均水平濃度勾配は5cm深において最も大きくなったが、平均鉛直勾配(5〜10cm層)の約5%の大きさであった。このことから、土壌中におけるCO_2輸送では鉛直輸送が卓越しており、水平輸送の寄与は小さい(20分の1程度)と考えられた。 この研究の成果は、土壌からのCO_2放出過程を理解する基となるものであり、土壌呼吸等の測定で得られた結果との統合解析を進めることにより、土壌中におけるCO_2輸送メカニズムを明らかにできると考えている。
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