アセチル化処理は、木材の水分に対する寸法安定性や防腐・防蟻性を高め、湿度変動時に生じる木材の強度的性質やレオロジー的性質の変動も抑制する、非常に有効な木材改質法である。しかし、長時間処理であることや大量の薬剤を使用することなどの問題点も抱えている。本課題では、液体並の高密度ながら気体並の浸透・拡散力を持つ超臨界二酸化酸素を化学反応場とした木材のアセチル化処理法を検討した。 実際にはあらかじめアルベン抽出処理(96h)及び熱水抽出処理(8h)したスギ心材試片を用いた。試片寸法は抗膨潤能(ASE)測定用が5mm(L)×20mm(R)×20mm(T)、強度測定用が100mm(L)×6mm(R)×6mm(T)であった。無水酢酸0.35mol/lを耐圧容器内に注入し、さらに全乾状態の試片2個を無水酢酸と直接接触しないように容器に入れ、密閉した。10分間減圧したのちに二酸化炭素を充填させ、温度と圧力を120または130℃/10〜12MPaに調整した。目的の温度・圧力に達した時点で実験開始とし、1〜24時間アセチル化処理を行った。 処理後、試片の重量増加率を求めたところ、1時間でも16〜20%の重量増加率が得られた。処理時間を延ばすことで重量増加率はさらに増加し、24時間処理で24〜28%に達した。処理試片を水中に沈め、減圧しながら1週間浸漬させたのち、試片寸法を測定して膨潤率を求め、ASEを算出した結果、1時間でASEは約60〜76%に達し、短時間で高い寸法安定性が得られた。さらに15時間以上の処理ではASEは80%を超え、無触媒反応としては非常に高い値が得られた。 全乾状態の処理試片を二点支持中央集中加重方式によって繊維方向の応力-ひずみ図を作成し、曲げヤング率(MOE)および曲げ強さ(MOR)を測定した結果、未処理試片のMOEが5.9〜7.8GPa、MORが77〜98MPaであったのに対し、アセチル化処理試片はMOEが6.0〜7.9GPa、MORが72〜90MPaとなり、両者はほぼ同じ値を示した。このことから、超臨界二酸化炭素によるアセチル処理が木材強度を低下させるようなことはないと推測された。
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