研究概要 |
2年目である昨年度の研究では、日本在来の系統(在来型)とユーラシア大陸由来の系統(導入型)を区別する核DNAマーカーとして、マイクロサテライトマーカーの隣接領域にある一塩基多型(SNP)を対象としたマーカーを5つ開発した。当初の計画では、マイクロサテライト領域の繰り返し配列の長さの多型をマーカーとして利用する計画であったが、開発を進めていく途上で隣接領域にSNPが存在することが判明したので、ホモプラシーの比較的少ないこちらをマーカーとして採用した。開発した5つのマーカーは、一度のPCR反応で同時に増幅することが可能であり、さらにそのまま、ダイレクトシーケンスにより塩基配列情報を得ることが可能である。 このマーカーを開発するにあたっては、日本在来系統を代表するものとして、琵琶湖の野生型個体だけでなく、日本の他の地域から得られた個体も比較材料として用いた。これは、平行して進めていたミトコンドリアDNAの研究において、ユーラシア大陸の系統と姉妹群を成すのは、当初考えていた琵琶湖の野生型系統だけではなく、日本の他の地域にもこれと近縁な系統が存在し、これら全体が「日本在来系統」としてユーラシア大陸の系統と姉妹群をなすことが判明したからである(Mabuchi, et. al.2008)。琵琶湖以外の日本産の標本を比較材料とすることにより、本研究で開発した5つのマーカーは、琵琶湖の野生型系統だけでなく、日本の在来系統と大陸由来の系統とを区別できるものとなっている。
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