研究概要 |
近年、渦鞭毛藻の生産する神経毒による麻痺性貝毒の発生が、世界各国において報告されている。養殖漁業や公衆衛生の面で非常に深刻な問題を引き起こすため、麻痺性貝毒被害防止のための監視体制を整えることは急務となっている。本研究では,麻痺性貝毒の世界各地の正確な発生状況の把握法と,被害を未然に防ぐことが可能な発生予察法を開発することを目的としている。本年度において行った研究および結果は以下の通りである。 1.大阪湾における有毒プランクトンの発生予察 平成19年1月〜平成20年4月までの3ケ月間計4回、大阪湾5地点の沿岸域において、底泥サンプルを採取した。採取したサンプルすべてから、DNAおよびRNAを抽出し分子生物学的手法を用いて解析を行った結果、底泥中には麻痺性貝毒原因有毒プランクトンが存在していることが明らかとなった。また、RNAを発現する活性ある細胞が多数存在したことから、大阪湾の底泥に存在するseed populationを元に、麻痺性貝毒が発生する可能性が示唆された。さらに、RNAを用いた発生予察はこれまで行われておらず、非常に有用な手法となりうることが期待された。 2.バラストタンク底泥に含まれる麻痺性貝毒原因プラXクトンの発生予察 有毒プランクトンのグローバル化の原因の一つとして、最も問題視されているのが船舶バラスト水である。しかし、これまでの研究はバラストタンク内の水に着目しており、大量に蓄積される泥を介した貝毒発生の実態は知られていない。本年度においては、バラストタンク内泥をプランクトン培地で培養し、分子生物学的手法を用いて増殖するプランクトン個体群を解析することにより世界的な発生予察を行った。その結果、バラストタンク泥を元に貝毒原因プランクトンが増殖することが明らかとなり、さらに詳細な予察法を確立する必要があると考えられた。
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