研究概要 |
獲得免疫の主役であるT細胞は主要組織適合抗原(MHC)によって拘束されるため、その機能解析にはMHCの遺伝型が適合したクローン系統の実験動物が不可欠である。このため、免疫実験に有用なクローン系統が殆ど確立されていない魚類では、この分野の研究が立ち遅れている。本研究では、クローンギンブナを用いることにより、魚類におけるウイルス抗原特異的T細胞の培養システムの構築を試みる。 前年度までの研究により、ギンブナのリンパ球は、ウイルス(CHNV)に感染させた抗原提示細胞群と混合培養した場合、ウイルス抗原特異的かつ遺伝的拘束的に増殖することを明らかにした。本年度は、その増殖した培養リンパに細胞傷害T細胞(CTL)が含まれているのかを明らかにするため、1)培養リンパ球のウイルス感染細胞に対する傷害活性を測定し、2)感染細胞に接着している培養リンパ球の TCR,CD8αmRNA発現の有無をin situ hybridizationによって解析した。1)培養2,4日目のリンパ球は、ほとんどCHNV感染細胞を傷害しなかったが、培養、8,12日目のリンパ球は、MHCの遺伝子型が一致するCHNV感染細胞を強く傷害した。2)培養4日目の培養細胞の殆どはリンパ芽球で構成されており、それらの多くがTCRとCD8α陽性細胞であった。また、培養12日目の培養リンパ球は、CHNV感染細胞に接着することによって、殺傷していることが明らかとなった。その接着しているリンパ球は、TCRとCD8α陽性細胞であることが確かめられた。 以上、1)、2)の結果から、in vitroでのウイルス抗原感作によって、増殖した培養リンパ球は、TCRCD8α陽性のCTLで、抗原特異性、MHC拘束性により感染細胞を認識することが明らかになった。
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