獲得免疫の主役であるT細胞は主要組織適合抗原(MHC)によって拘束されるため、その機能解析にはMHCの遺伝子型が適合したクローン動物の存在が不可欠である。本課題では、T細胞研究に有用であるクローンギンブナを用いて、魚類におけるT細胞が主体となる獲得免疫系をin vitroで評価する実験系を構築した。 前年度までの研究で、(1)ウイルス(CHNV)で感作したギンブナリンパ球は、CHNVに感染させた抗原提示細胞と混合培養することにより、抗原特異的に増殖すること、(2)その増殖したリンパ球は、哺乳類の細胞傷害T細胞(CTL)と同様にCHNV感染同系細胞を傷害するが、感染アロ(同種異型)は傷害しないこと、(3)感染細胞を傷害しているリンパ球は、TCRとCD8αといったCTLの細胞表面マーカーを発現していることを明らかにした。本年度は、前年度までに確立した方法を発展させ、ウイルス抗原特異的なリンパ球の長期培養を試みた。まず、ウイルス抗原特異的なリンパ球の増殖を誘導し、2週間後、ウイルス感染させた同系統由来の抗原提示細胞群で追加刺激した。追加刺激による増殖は誘導されたが、1ヶ月以上培養し続けることは困難であった。今後、添加する血清濃度、ConA培養上清などのリンパ球の増殖を促進させる因子の添加による細胞増殖の促進など、詳細な培養条件を検討し、ウイルス抗原特異的なリンパ球の長期培養系の確立及び株化を試みる必要がある。
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