研究概要 |
海産種子植物アマモの種子休眠と種子発芽の生理メカニズムを明らかにするため、生理学的・分子生物学的研究を行った。 1.アマモ種子の生理学的解析 5月1日から7月12日にかけて、走水海岸(横須賀市)の天然アマモ場において、花穂のマーキング(計967本)と種子の採取(開花後0,3,7,11,14,18,21,28,32,35,42,49,56日目)を行った。種子の長軸長と短軸長は、開花後28-35日目頃まで増加した。種子総重量は開花後28日目頃まで増加し、その後減少した。種子含水率は、開花後21日目頃までは80%以上と高かったが、その後減少して開花後37日目以降では約40%で安定した。これらのことから、種子発達は開花後28日目頃まで進行し、その後水分の減少が起きることが明らかになった。 成熟種子の発芽について解析した。水温18℃での発芽率は、通常の海水濃度では10%以下であるが、1/2海水濃度では約70%、1/4海水濃度では80%以上となった。また、1/2海水濃度での発芽率は、25℃では50%、18-20℃では70%以上となった。塩分の代わりにマニトールを用いて人工的に浸透圧を調節したところ、浸透圧が低いほど発芽率が高くなった。これらのことから、アマモ種子の発芽には低温と低浸透圧が促進的に作用することが明らかになった。 2.アマモ種子の分子生物学的解析 イネやトウモロコシの遺伝子配列を参考に、休眠関連遺伝子や発芽関連遺伝子の検出用PCRプライマーを作成した。アマモ種子から単離されたRNAやゲノムDNAを用いて、LEAとVP1/ABI3(休眠関連遺伝子)やAMY(発芽関連遺伝子)についてPCRクローニングを試みたが、現在まで有効なクローンは得られていない。一方、発現解析のコントロールとしてEF1遺伝子を単離し、各組織で恒常的に発現していることを確認した。
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