研究課題
平成20年度は魚類のTh1/Th2バランスに関連した因子について解析し、以下の成果が得られた。1. ギンブナPerforin遺伝子の単離と発現解析魚類の細胞性免疫に関わる因子としてギンブナよりPerforin遺伝子を単離した。ギンブナには3種類のPerforin遺伝子が存在し、それぞれ発現部位が異なっていた。鱗移植によるアロ抗原感作の結果、一種類のPerforinが移植部位周辺に発現していた。一方で腎臓白血球をin vitroで同種異系細胞株と共培養した結果、鱗移植部位に発現したものとは異なるPerforin遺伝子の発現が確認された。これらのことから、魚類においてもPerforinは細胞性免疫に関与していることが示された。2. Edwardsiella tarda感染後のギンブナにおける細胞性免疫関連遺伝子の動態一般に哺乳類では細胞内寄生細菌に対する感染防御には液性免疫ではなく細胞性免疫が重要とされている。E. tardaは魚類に感染するエドワジエラ症原因菌であり、本細菌も細胞内寄生細菌であることが知られている。本原因菌の感染防御には液性免疫は有効ではないことから、本研究ではE. tarda感染後のギンブナにおける細胞性免疫関連遺伝子の発現動態を調べた。E. tarda感染後の体内菌数が減少するのに合わせてInterferon-γ遺伝子の発現レベルが上昇しマクロファージ数が増加した。その後、CD8a遺伝子やPerforin遺伝子の上昇も確認され、リンパ球数が増加した。一方、血中抗体価にはほとんど変化がなかったことから、ギンブナにおいてE. tardaの感染防御には細胞性免疫が有効であることが示された。本成果は、水産養殖において発生する魚病に対する予防技術の開発に大きく貢献するものである。
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Dev. Comp. Immunol. 32(8)
ページ: 898-907
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