1.gyrA遺伝子の多型に基づいた冷水病菌の型別 冷水病菌は宿主特異性が高いため、有効な対策を立てる為にはまず宿主魚種ごとに冷水病菌を識別する必要がある。そこでgyrA遺伝子内に存在する多型部位に基づいたPCR-RFLPにより、冷水病菌分離株を宿主魚種ごとに型別した。切断パターンにより冷水病菌をG-C型、G-T型、A-C型そしてA-T型の4タイプに区分した。全国の関係機関から集めた様々な魚種由来の冷水病菌216株を型別した結果、G-C型に区分された冷水病菌79株はワカサギから分離された1株を除いて全てアユから分離された株であった。G-C型のワカサギ株は保菌検査時に分離された株であり、この株のアユヘの病原性は既に確認されている。A-T型に区分された冷水病菌51株は全てサケ科魚類から分離された株であり、アユから分離されたものはなかった。A-C型に区分された冷水病菌70株とG-T型に区分された冷水病菌16株は、様々な魚種から分離されていた。このように分離魚種とgyrA遺伝子の多型との間に関連性があることを見出した。 2.冷水病菌のgyrA遺伝子型とアユヘの病原性 全国から集めた冷水病菌分離株の中でアユからの分離例がなかったA-T型の冷水病菌を8株選び浸漬および同居攻撃試験を行ったところ、全ての株がアユに病気を引き起こさなかった。G-C型に区分された冷水病菌は常にアユに冷水病を引き起こした。gyrA遺伝子の多型に基づいて型別することにより、アユに冷水病を引き起こすタイプと引き起こさないタイプに分けることが可能になった。
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