研究概要 |
メダカ胚より単離されたミオシン重鎖アイソフォーム遺伝子につき、reverse transcription(RT)-polymerase chain reaction(PCR)およびin situ hybridizationにより発現パターンのプロファイリングを行なったところ、仔魚速筋型mMYH_<L1>およびmMYH_<L2>は孵化期前後で強く発現し、体幹部筋節および頭部筋肉に局在した。一方、胚体速筋型mMYH_<emb1>および遅筋・心筋型mMYH_<c1>は体幹部筋肉を上下に分割する水平筋隔で特異的に発現し、同じく遅筋・心筋型mMYH_<c2>は心臓で発現した。次に、こうした組織特異的なミオシン重鎖アイソフォームの発現が、筋肉の性質にどのように反映されるかを検討するため、免疫染色およびミオシンATPase活性染色による解析を行なった。Adaxial cellを特異的に認識するF59抗体を用いた免疫染色の結果、F59陽性細胞は受精後3日胚で脊索近傍に、孵化期の胚では筋節および水平筋隔側方に分布した。次に、様々な発生過程にある胚の体幹部筋肉につき、ミオシンATPase活性染色により遅筋と速筋を区別したところ、遅筋組織は水平筋隔側方から表層全域へ肥厚しながら発達することが示された。水平筋隔側方における遅筋線維の局在は、mMYH_<emb1>および祝mMYH_<c1>の発現部位、F59陽性の細胞の分布と一致したことから、遅筋がadaxial cellに由来し、その形成にmMYH_<emb1>およびmMYH_<c1>が関与することが示された。また、筋特異的タンパク質の転写制御に関与することが報告されているmyoD family遺伝子をメダカから単離した。孵化期胚よりmyf5,myod1,myod2,myogeninおよびmrf4の5種類の遺伝子を単離し、それぞれの発現パターンをRPPCRおよびin situ hybridizationにより観察したところ、myf5は受精後26時間から体節および未分節中胚葉において、また、myod1およびmyogeninは受精後34時間からより吻側の体節において発現し、それぞれのパターンには明瞭な違いがみられた。
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