研究課題
これまで神経関係の研究に盛んに用いられてきたN-メチル-D-アスパラギン酸が、近年、天然に広く存在することが明らかとなった。海産無脊椎動物体内にはこのN-メチル-D-アスパラギン酸のみならず、そのエナンチオマーN-メチル-L-アスパラギン酸、さらにはN-メチル-D-グルタミン酸およびN-メチル-L-グルタミン酸も存在する。本研究はほとんど知見のないこれらのN-メチル-D-アミノ酸およびそのエナンチオマーの代謝および生理的役割を解明することを目的とする。平成19年度は、昨年度の研究でN-メチルアミノ酸の存在が明らかとなったヒトデを主に用いて、以下の事項について検討した。1.D-アスパラギン酸の生合成を可能とする酵素の発見と精製N-メチル-D-アスパラギン酸の前駆体と考えられるD-アスパラギン酸の生合成を可能とする酵素活性を発見した。本酵素活性には、ピリドキサール-5'-リン酸が関与している可能性が示唆された。現在、本酵素の精製が進行中である。2.N-メチル-D-アミノ酸の分解に関与する酵素の精製N-メチル-D-アスパラギン酸およびN-メチル-D-グルタミン酸も基質とすることが明らかとなったD-アミノ酸オキシダーゼの精製が進行中である。3.N-メチルアミノ酸含有量と各酵素活性との関係N-メチルアミノ酸の代謝や生理的役割の手がかりを得るため、それらの含有量と各酵素活性の変動について検討した。D-アスパラギン酸の生合成を可能とする酵素活性が高い時期には、D-アミノ酸オキシダーゼ活性は低下し、その際、N-メチル-D-アスパラギン酸含有量は増加することが明らかとなった。
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D-Amino Acids:New Frontier in Amino Acid and Protein Research, Nova Sciences Publishers 2007
ページ: 25-32