研究概要 |
EUおよび近隣諸国では,近年,段階的に畜産副産物の処理・利用に関して,厳しい規制が設けられ,レンダリング産業および関連諸産業の産業構造や畜産副産物の流通構造に大きな変化が生じている。 平成18年度は,スイス,ドイツのレンダリング産業の産業構造と安全性確保の実態を明らかにすることを課題とした。具体的には,畜産副産物規制の強化に伴うレンダリング産業の構造変容の実態を明らかにすることを課題とした。 主な研究成果は以下のとおりである。 1.スイスのレンダリング産業は,EUの畜産副産物規則(EC/1774/2002)に準拠した規則によって厳しく規制されており,再編統合が進んでいる実態が明らかとなった。 2.ドイツのレンダリング産業もまた,近年,構造再編が進んでいる。かつて原料処理を行っていた工場が原料集荷場としての機能のみを果たしているケースも散見された。畜産副産物の年間処理量の推移は近年増加傾向を示しており,合理化が急速に進んでいる。 3.調査したドイツのバーデン・ヴェルテンベルク州では,TBAと呼ばれる公営レンダリング工場で畜産副産物の処理が行なわれており、斃死獣の引取・処理コストは行政が負担している。 4.ドイツのレンダリング産業では,バイオガス工場と原料集荷をめぐって競争が激化していた。バイオガス工場が,制度的・技術的裏づけのあるバーゲニングパワーを活用することで,原料集荷において今後ますます優位性を発揮するのは明らかである。その点,レンダリング産業が従来の集荷業態から脱皮し,如何にその存在意義を見出すかが今後の収益性確保とも深く関わり,重要な課題となっている。 5.欧州では,一部の畜産副産物の利用において,規制が緩和してきており,今後の動向が注目される。
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