研究概要 |
非農家の協力による農村環境保全活動として,前年度に引き続き「棚田オーナー制度」を研究の主要対象とし,栃木県茂木町において同制度についての実態調査を行った。茂木町は町内に三つの棚田オーナー制度が運営されている全国的にも例のない自治体である。聞取り調査の結果,棚田オーナー制度における会員(地域外住民)の貢献は,一般的に開始から年数を経るごとに大きくなっていくことが明らかとなった。したがって,この種の制度にとっては如何に長い間継続させるかということが重要である。 また,棚田オーナー制度において地域外住民に期待される役割は,実作業や農村環境保全への貢献にとどまらず,地域社会の活性化に貢献することが期待されている。開始初年度のオーナー制度の参加者に対するアンケート調査の結果から,地域外からの参加者(オーナー)も,より一層の地元住民との関わり,地域社会への貢献を望んでいることが分かった。地元住民と地域外住民とのマッチングを実現する上で,地方自治体の役割は大きく,茂木町で棚田オーナー制度が成功している原因は,地方自治体によるものと推測される。以上が本年度の実態調査で明らかとなった点である。 さらに,地域共有資源の管理を行う上で地域外住民も含めたメンバー間の協力・合意形成が必要となるという観点から,ゲーム理論を中心とするミクロ経済学理論を地域共資源管理に適用した文献のサーベイを行っている.
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