研究概要 |
近年、食品安全問題が頻発する中で,食品安全を担保する消費者行政の拡充が求められている.食品の品質情報についての非対称性への対応策として,食品ラベル制度があるが,これらの制度を評価するうえで,ラベル情報が消費者行動にどのように影響しているのかを分析する必要がある.本研究では,前年度に収集したウインナーソーセージについてのスキャナーパネルデータに,独自に収集した製品ラベルデータを組み合わせて分析し,顕示選好データによる食品ラベル情報に対する消費者評価について分析した. 本研究の分析は次のとおりであった.まず,表示の多様性を保持しつつ分析を簡便化するため,前年度と同様にクラスター分析により,ラベル表示ごとに似た製品を分類した.つづいて,ラベルに表示されている製品情報について,ランダムパラメータロジットモデルを推計し,消費者行動に対する製品情報の影響を検討した.さらに,推計結果を利用して,JAS表示ならびにアレルギー物質の表記方法について,COIの概念に基づいてラベル情報の消費者評価を計測した.その結果,食品表示制度による消費者便益の存在が統計的に確認された。 あわせて、平成19年に起こったミートホープ事件の影響について論考をまとめ,産業連関表等を援用し,事件の影響が広範囲に広がることを示した上で、取引関係をガバナンスする主本の必要性を論じた.また、世界各地から原料調達を進めている状況のもとでは、生産から消費までの取引関係が多くの主権国家にまたがるので、国などによるガバナンスが困難になる可能性を指摘した。
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