研究概要 |
(1) 食料安全保障の水準からみた農地保全水準モデル (1) 急速に減少する農業労働力が制約となり, 現在の農地面積を確保したとしても, 2030年には, 最低限必要な食料を供給することが不可能となる。 (2) 非農業部門から農業部門への労働力を投入が可能な場合には, 農林水産省の予測どおりに農地が減少しても, 将来的に必要となる食料の供給は可能である。しかし, 非農業部門の労働力を大量に必要とするために, 他産業に大きな影響を与える可能性がある。 (3) 農業部門への化石燃料の投入量が現在と比較し50%の水準になると, 農外の労働量を活用しても, 最低限必要な食料を供給することが不可能となる。以上のように, 我が国の食料安全保障水準はきわめて脆弱な状態にある。不測の事態が発生した場合であっても, 国民にとっての必要最低限の食料を必ず確保できる体制を整備する必要があり, 現在の農地面積の維持に加え, 農業労働力の確保が重要となる。その対策として, 現在行われている耕作放棄の抑制・再活用等の取り組みを食料安全保障の観点から再評価し, その推進を行う。労働力確保のためには, 新規就農の促進のみならず, 都市と農村の交流の促進を通して, 非農家への農業体験及びトレーニングによって農外労働力の質の向上等が考えられる。また, 労働粗放的な栽培技術・作物の開発や, 不測時における農業用化石燃料の優先的確保の体制を整える必要がある。 (2) 耕作放棄発生のメカニズムの定量的な分析および耕作放棄発生のシミュレーションモデルの構築個別農家レベルの意志決定・行動の観点から, 自作放棄と農家経済環境の関係を明らかにすることを目的とした。 農家は農地の作付・農地保全管理からも大きな効用を得ており, これが, 自作放棄抑制に重要な役割を果たしている。しかし, それであっても, 80a以上の農地を所有する農家は自作放棄する。現状の農産物価格では, 農家は, 大部分の効用を水稲から得ている。また, 小麦よりも単位面積当たり効用が多く得られ, かつ省力的な作物がない。このため, 米価が低下した場合には,自作放棄は発生しないが,しかし,効用水準の低下は大きい。一方, 小麦価格が低下した場合には, 効用水準の低下は小さいが, しかし, 自作放棄が発生する。これら自作放棄が発生する場合の対策とし, 3つの対策を検討した結果, 「農地を保全管理することに対して一定金額の補助を行うこと」が比較的低コストで実現性が高いと対策である。 (3) 持続的かつ効率的な農業生産システムの設計中山間地域の集落において, 非農家の労働資源を農業に利用することで, 耕作放棄の抑制, 農業所得の増加に加え, 非農家世帯に賃金が支払われることによる集落全体の所得の増加が可能となることを定量的に示した。非農家の草刈り経験割合・草刈り機の所有割合対象地域のように農業所得が少ない地域では, 農家は非農家に賃金を支払うことを負担に感じる可能性がある。そこで, 非農家への支払い賃金に中山間地域等また, 農業とあまり関わっていない非農家が農作業の手伝いをするには, 心理的な抵抗があると考えられる。従って, 農家の話し合いや会合への非農家の参加
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