研究概要 |
FTAやEPAを通じて,わが国が東アジア諸国との経済連携を深めつつある中,東アジア共通農業政策構築の実現可能性について現在論議が行われている.日本,中国,韓国およびアセアン諸国による共同立案を目指したこの東アジア共通農業政策には,関係各国がGDPに比例して拠出した基金を共通予算とし,関係国間で必要な共通政策を講じることにより,多様な農業の共存と安定的発展を東アジアで図ろうという狙いがあり,FTAなどの経済連携によって食料安全保障や農業生産者保護上,大きな不利益を被る恐れのある関係国においては特に,その実現が期待されている. 本研究の目的は,多国間貿易の政策シミュレーション分析を通じて,東アジア共通農業政策の多国間コスト・ベネフィット分析を計量的に行い,東アジア共通農業政策構築の実現可能性について考察することである. 平成19年度に実施した研究は,次のとおりである. 1.コメの生産,消費,国際輸送,貿易政策に関する世界各国のデータ,ならびに東アジア共通農業政策に関するデータを調査・収集し,多国間貿易の政策シミュレーション分析,および東アジア共通農業政策の多国間コスト・ベネフィット分析に必要なデータセットを構築した. 2.コメの供給関数,需要関数および輸送費を国別に各々推計した. 3.東アジア共通農業政策として最も期待される国際コメ備蓄政策について,多国間コメ貿易の政策シミュレーション分析,および多国間コスト・ベネフィット分析を行った.
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