研究概要 |
ETAやEPAを通じて, わが国が東アジア諸国との経済連携を深めつつある中, 東アジア共通農業政策構築の実現可能性について現在論議が行われている. 日本, 中国, 韓国およびアセアン諸国による共同立案を目指したこの東アジア共通農業政策には, 関係各国がGDPに比例して拠出した基金を共通予算とし, 関係国間で必要な共通政策を講じることにより, 多様な農業の共存と安定的発展を東アジアで図ろうという狙いがあり, FTAなどの経済連携によって食料安全保障や農業生産者保護上, 大きな不利益を被る恐れのある関係国においては特に, その実現が期待されている. 本研究の目的は, 多国間貿易の政策シミュレーション分析を通じて, 東アジア共通農業政策の多国間コスト・ベネフィット分析を計量的に行い, 東アジア共通農業政策構築の実現可能性について考察することである. 平成20年度は, 具体的な東アジア共通農業政策の1つとして論議され, 日本政府によって世界貿易機関に提案された国際備蓄制度の有効性と実現可能性について, 国際コメ貿易を事例に, 次の3点を計量的に明らかにした. (1)東アジアに限定した国際コメ備蓄制度は発動されることがなく, 現実的意義が小さい. (2)バングラデシュを国際備蓄の受贈者として含む備蓄制度は, バングラデシュの食料安全保障の確保と市場安定化に貢献する. しかし, 国際市場は歪曲され, 莫大な備蓄費用がかかる. (3)以上の問題は, 先進国の替わりに輸出国が国際備蓄の贈与者となるよう備蓄制度を改良することにより, 解決される.
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