本研究は、青果物・米における播種前契約取引について、取引に内在するコンフリクト、リスクの大きさ、契約内容の適切な妥協点などを分析するため、取引モデルの構築とその定量分析法の開発を目的とする。 初年度は、広範な事例に対するヒアリングを行い、契約に対する考え方、評価基準を抽出した。併せて、手法上の問題を検討した。 1.重要な評価基準は、以下の通りであった。第1に、栽培・生育状況や市況状況の変化に対する事後的調整における、機会主義的行動の如何である。これは、取引当事者相互の取引方針と許容度の関係の中で相対的に判断される項目である。定量化する上で、この相対的関係を組み込むことが重要である。第2に、栽培・品質基準、取引量・時期の遵守等そのものよりも、それらの項目を改善していく意思・取り組みが取引継続の評価基準となっている。第3に、大手小売店、農協などでは、担当者の異動が起こった際など、当該取引相手に対する取引の方針が大きく変更されることがある。これにより、直接的あるいは間接的に取引が縮小・中断されていくことがある。 2.取引モデルとしてゲームモデルを用いることとし、特定の取引におけるゲームの定量分析を行うために、利得関数の導出にAHP (Analytical Hierarchy Process)を援用する。この援用について、AHPの評価項目とゲームにおける戦略の組み合わせとの対応、辞書式選好が見られる場合、及び、利得の似通った戦略の組み合わせが計測された場合について分析方法を検討した。
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