2ヵ年の初年度であった18年度は、研究課題と関連のある学会、シンポジウム、研究会に数多く出席し、わが国の漁業経済の現況と水産業の国際動向について理解を深めると同時に、国内外の漁業経済に関する統計データを収集し、漁業生産性の国際比較と水産物市場の価格伝達メカニズムについて計量分析を行った。その結果は以下にまとめられる。 第一に、1970年から1995年までの4期、51ヵ国の漁業統計データを用い、国横断的生産関数を計測し、その国別効果の値から漁業生産性の国際比較を行った。わが国の漁業生産性はノルウェー等の欧米の水産国と比べても十分に高い値を示し、漁業における国際競争力は必ずしも漁業技術のみに規定されていないことを示唆する結果となった。技術進歩の程度を表す係数(時間効果)は、正の値を示すものの統計的に有意ではなく、漁業の生産性は日本のみならず世界的に停滞してることが明らかになった。 第二に、さんまの市場間(産地、消費地、小売)の価格伝達に関して、長期的均衡関係である共和分ベクトルとその長期的均衡関係を補正する多変量誤差修正モデルを計測した。その計測結果から、さんまの価格は産地市場、消費地市場、小売市場へと川上から川下へは伝達されるものの、小売市場や産地市場での価格変動が産地価格には影響を及ぼさないことが明らかとなった。低迷している産地価格の要因としては、産地価格が水揚量や在庫量などの供給サイドの影響のみの規定され、消費者ニーズを反映する小売価格とは無関係に価格形成が行われていることが考えられる。水産物価格形成における産地市場の機能とその評価については、次年度以降も検討を要する。
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